「出資持分あり・なしの医療法人の違い」と「医療法人を承継する際の注意点」

現在、医療法人については大きく分けて「出資持分あり医療法人」と「出資持分なし医療法人」の2つがあります。本コラムでは、出資持分あり・なし医療法人の違いや承継する際の注意点を記載していきます。

出資持分ありと出資持分なしの医療法人の違いとは?

出資持分ありと出資持分なしの医療法人について、端的に表現すると、出資者の財産権があるか・ないかが違いと言えます。より正確に言うならば、出資者が医療法人設立時に出資した持分に関して財産権・返還請求権を持ち、相続・譲渡(承継)することが出来るのが出資持分あり医療法人(経過措置型医療法人とも言われます)であり、(基金制度による出資・その該当額の払い戻しを除き)解散時に残った残余財産は国などに帰属させるのが出資持分なし医療法人となります。

第五次医療法改正以降、出資持分無し医療法人のみ設立できることとなりました。
この法改正自体の詳細は割愛しますが、改正の目的には、医療法人の出資持分の払い戻し・返還請求にまつわる訴訟トラブルを減らすこと、ひいては医療法人の経営の不安定化を減らすことも挙げられています。

現在、設立出来るのは出資持分なしの医療法人のみですが、全体の割合を見るとまだまだ出資持分あり医療法人が多いのが実態です。厚生労働省が発表している年次推移(平成30年)によると、全国の医療法人53,944件のうち、出資持分ありの社団医療法人は39,716件(73.6%)とあり、約7割が出資持分有り医療法人となっています。

出典:厚生労働省 種類別医療法人数の年次推移

医療法人を第三者へ承継する際の注意点

出資持分あり、出資持分なしの医療法人について、第三者へ承継する際には下記のような対応が必要となります。

・出資持分ありの場合:出資持分の譲渡や払い戻し・退職金での調整
・出資持分なしの場合:出資持分の譲渡・払い戻しはなく、主に退職金を中心とした調整

<持分ありの場合>

持分ありの場合は、出資持分の譲渡や払い戻しが承継時に必要になるため、その点について詳しく知る必要があります。医療法人は医療法54条にある通り、「医療法人は、剰余金の配当をしてはならない。
という理由で、出資持分は相続財産として「財産評価基本通達194-2(医療法人の出資の評価)規定が適用されています。

「財産評価基本通達とは、相続性・贈与税を課税価格計算する際に、対象財産の評価をどう取り扱うかを国税庁が定めたものですが、一般的には、①類似業種比準価額、もしくは②純資産価額の2パターンによって評価額算定を行います。計算式については、本コラムの文末に記載をしていますが、複雑な内容となるため顧問税理士や専門家に相談の上で、算定されることをお勧めします。

出資持分の評価額が大きい場合には特に注意が必要

出資持分の評価額は、(先述のとおり配当ができないため)盛業であればあるほど高くなり、その分だけ相続税が巨額になってしまうことが問題点として挙げられます。「患者が多く来院する医療法人にも関わらず、後継者探しで苦戦している」という話を聞いたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、出資持分の評価額が過大となり、お相手探しが困難になっているケースが多いのが実情です。
こうしたケースにおいては、出資持分の譲渡・払い戻しの前に、出資持分の評価額を下げる対策を取ることが有効です。

具体的には、
・役員退職金など人件費の増加、利益圧縮(生命保険の加入、MS法人への利益分散)
・大規模な設備投資(増築・改築・新築・医療機器の購入)
などが挙げられます。

<持分なしの場合>

基本的に持分無しの場合は、理事長側に出資持分はないので、持分ありの時のような払い戻し・譲渡による相続などは発生しないのが原則です。その為、医療法人で定めた役員退職金にそって、医療法人の財産価値を回収する形となります。

ただし、基金制度を利用した「基金拠出型法人のみは、持分なし医療法人の中でも拠出した金額を上限として、これの返還を譲渡側にする義務があります。(例えば、拠出150万で譲渡時の医療法人の財産価値が2億であっても、150万は変わらず、逆に譲渡時の財産価値が拠出金以下の場合は、払い戻し請求権はその拠出金以下の金額となります。)

このような制度上の違いを認識した上で、(とくに持分あり医療法人においては)事業承継に向けて、顧問税理士や専門家へ早めの相談をし、対策を講じておくことが重要と言えます。

※参考:出資持分の評価方法

①類似業種比準価額方式の算出方法
こちらは、業種が類似する上場企業の平均株価を基準に、評価対象医療法人の利益金額と純資産価額を比較して、株価を算出する方法です。(平成29年の税制改正にて、利益金額との比率が同じになり、改正前よりも節税対策は改正前よりも効果が薄れたと言えます)

A:類似業種の株価
C:課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの年利益金額
D:課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)
Ⓒ:評価会社の1株当たりの利益金額
Ⓓ:評価会社の1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)
※斟酌率で、会社(法人)規模によって0.5~0.7異なります。

②純資産価額
こちらは含み益がある医療法人を精算する際に、含み益に対して課税がなされるため、その額を控除した上で、算定いたします。

上記の分子にある法人税等相当額は、(相続時評価額における純資産価額-相続時の帳簿価額での純資産価額)×37%にて算出されていきます。

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