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クリニック開業

承継元の賃借対照表をみるポイント

クリニックの譲渡案件を検討するには、様々な資料に目を通してその案件の現状を知る必要があります。
資料に記された情報をもとにそのクリニックの過去から現在を探り、自分が譲り受けた後の未来を思い描いていくことで、より具体的な検討が可能になります。
資料の中でも決算書は、最も大切な基礎資料であると同時に最もわかり難い資料といえます。 ポイントがわからず誤った理解をしたまま交渉が進み、結局行き違いが生じて話が進まなくなるケースもよくあります。

今回は、リクルートメディカルキャリアが運営する医院承継プログラムにて提携関係にあるクリニックサポート株式会社の代表取締役 長田耕一さまに「譲渡条件と深く関わる貸借対照表(B/S)のポイント」を解説していただきます。

こんにちは、クリニックサポート株式会社の長田と申します。私はリクルートさんとの提携協業を開始する以前より、医院承継の現場で多数のサポート(仲介業務)を行ってきました。
今回は、医師の皆さんから質問を頂くことの多い「(承継元の)貸借対照表を見る際のポイント」についてご紹介させていただきます。

「貸借対照表」から何がわかる?

“貸借対照表からは、譲り受けるその中身がわかります”

医療法人の決算書は、主に「貸借対照表(B/S)」と「損益計算書(P/L)」という表からできています。
とても簡単に例えると、貸借対照表は「財布の中身」、損益計算書は「お小遣い帳」に当たります。
医療法人の譲渡とは、医療法人という財布を譲り受けることを指しますので、貸借対照表を見ることで譲り受ける医療法人の中身を知ることができます。

「貸借対照表」は実際にどこをみればいい?

“貸借対照表は、直近年度の「資産の部」と「負債の部」をみます”

過去から現在を探るといっても実際に引き継ぐのは現在の中身ですので、過去の数値を参考としつつ見るべきは直近年度の数値となります。
資産の部・負債の部・純資産の部という3つのブロックに区分されていますが、引き継ぐ中身と関連するのは資産の部と負債の部で、純資産の部は別物と考えた方がわかりやすいでしょう。
純資産の部には出資金や資本金という法人への出資額や資本額を示した科目があります。
法人がこのお金を別に所有していて、そのお金を引き継ぐことができるという勘違いが稀にあります。
法人が所有しているお金=資産は資産の部に記載されているものが全てで、別に出資金分の金銭を保管しているわけではありません。
純資産の部は別物と考え、資産の部と負債の部をしっかりみることが重要です。

「貸借対照表」と譲渡条件の関係は?

“譲渡条件によって、貸借対照表の見るポイントが変わります”

医療法人の譲渡条件を大きく分けると、

(1)引渡日までの資産負債を精算して引き継ぐ条件
(2)資産負債をそのまま引き継ぐ条件
の2種類となります。

貸借対照表では、(1)であれば資産負債の差額がどの程度なのか、(2)であれば資産負債の何が残るのかを見る必要があります。
(1)と(2)では引き継ぐ中身が違いますので、譲渡案件としての価値も違ってきます。譲渡価格の検討では「利益が幾ら出ているか」という点からとかく損益計算書が注目されがちですが、「引き継ぐ中身」を知るためには貸借対照表も同じく重要な資料となります。 

実際の「貸借対照表」をみてみよう

実際の貸借対照表を使って、初期段階で注意すべきポイントをみてみましょう。
「資産の部」と「負債の部」に注目し、譲渡条件が「(1)引渡日までの資産負債を精算して引き継ぐ条件」のケースと「(2)資産負債をそのまま引き継ぐ条件」のケースに分けてみていきます。

(1)引渡日までの資産負債を精算して引き継ぐ条件

譲渡主が精算した後に何がどういう状態で残るのかがポイントになります。

○「資産の部」
引渡日までの運営により発生した資産・負債や譲渡主の個人的な資産が精算されます。このサンプルの中で残るものを挙げてみましょう。
・薬品  ・消耗備品  ・建物  ・器具備品  ・(車輌、差入保証金)
実態としての物がある資産が残ると考えるとわかりやすいかもしれません。
車両と差入保証金については、ケースバイケースになります。
車両は、使用用途を確認する必要があります。個人使用なのか訪問診療用や送迎用等の業務使用なのかで残るかどうかが変わります。
差入保証金は、譲渡主の意向を確認する必要があります。
内容は賃貸の敷金だと思われますが、敷金は譲渡主の意向で残す場合と残さない場合があります。
多額の敷金であった場合は特に確認が必要となります。
以上を合算すると引き継がれる資産の総額は7,707千円となります。 ただ、額面はあくまでこの貸借対照表が対象とした日時においての額面ですので、引渡日時点での額面とは多少異なります。 特に薬品・消耗備品は引渡し前の仕入を抑えることで変化しますので注意が必要です。

○負債の部
この条件でも、引き継ぎが必要な負債があります。
・預り金  ・未払法人税等
です。
どちらも税務署などに支払う時期が決まっているので、自由な時期に精算ができないものです。
この分の現預金を法人に残しておいてもらうなどして、引き継いだ後に精算することになります。
決算書上には負債として残りますが、実際上の負担はありません。

○価値試算
貸借対照表からみた価値は、「資産の総額2,650千円-負債0円=2,650千円」となります。
これがそのまま譲渡代金となるわけではなく、ここに出資金や営業権の価値が加算されて最終的な数字が導き出されることとなります。

(2)資産負債をそのまま引き継ぐ条件

引き継ぐ資産と負債の差額を試算することが必要になります。
そのまま引き継ぐといっても、必ずしもすべての資産負債を引き継ぐわけではありません。
判断をするためには、貸借対照表のより詳細な内容を知る必要があります。 その場合は、「勘定科目内訳書」という資料を参照し各科目の内容をチェックしていきます。
譲渡主の個人的なものや実態の無いものは、精算を前提に差額を試算することでよりリアルな価値がわかります。

○資産の部
この表では、次のものが引き継ぎ資産となり、それ以外の資産は清算されることになります。
・現金預金 ・医業未収金 ・薬品 ・消耗備品 ・建物 ・器具備品 ・(車輌、差入保証金)
試算すると引き継ぐ資産の額は18,450千円で、そのうち実際に現金化が可能な資産(現金預金、医業未収金)は15,800千円となります。

○負債の部
負債の部では、特に未払金と借入金に注目する必要があります。
スタッフ月給与や金融機関からの借入などのように定期的な支払いや返済がなされているものであれば、その支払いや返済を引き継ぐことで特に問題はありませんが、未払いや返済が滞っている場合は引き継ぎに際してどの様な精算を行うか相手方と協議する必要があります。
この表でいうと、理事長借入9,540千円がそれに該当します。
法人が理事長=譲渡主から借りた金銭になりますので、これをどうやって精算するか協議することとなります。
仮に理事長借入金を一括精算とすると負債の額は13,660千円となります。

○試算
以上の数値で差額を計算すると「現金化が可能な資産15,800千円-負債13,660千円=「2,140千円」となります。
この差額が、資産負債を精算したときの価値に上乗せされることになります。

(3)まとめ
比較的簡単なサンプルを使って譲渡価値を中心に探ってみましたが、一筋縄ではいかない複雑なものもよくみかけます。
とはいえ、貸借対照表は譲渡スキームの作成にも重要な資料ですので、譲渡条件に応じてしっかりと理解することが求められます。

POINT クリニックサポート株式会社
代表取締役 長田耕一 氏

医療分野において数少ない認定M&Aアドバイザーとして数多くの事業承継マッチングを成功に導く。

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